一つ前のブログ記事”ジーンズとリベットの関係“で紹介した様に、ポケット部等の取り付け強化にリベットが使用されている事がジーンズの大きな特徴です。
ヴィンテージ・リーバイス501の特定の年代のジーンズには、「隠しリベット」と呼ばれる特徴的ディテールがあります。ここでは、最初期のジーンズの話から”隠しリベット”が誕生するまで、そして、それを使用したジーンズについて説明します。
リーバイス社は1873年にパンツのポケット等の取り付け強化にリベットを使用する特許を取得、その後直ちにリベットを付けたパンツの製造と販売を開始しました。このリベットを取り付けたデニムパンツが最初のジーンズです。
上の写真は、現時点で認知されている最古のジーンズです。(写真:リーバイス社ホームページより)推定年代は1879年頃です。バックポケットは右側に一つのみなのが19世紀のジーンズの外観上の特徴です。ポケットの上部両端にリベットが付いています。
隠しリベットに対して、”剥き出しリベット”と呼ばれたりもしています。
この写真は、最初の写真のジーンズの前側です。(リーバイスジャパン公式YouTubeビデオからのスクリーンショット)本ジーンズは2011年に日本で公開されました。(Levi’s OVERALLS THE ORIGIN “THE FILM”)
フロントは両側にポケット、右ポケット上にはウォッチポケットが付いています。現代のジーンズと大きく変わらないデザインである事が分かります。
1901年に左側のバックポケットが追加され、現代にまで続く5ポケットの原型が出来上がりました。上の写真は、Levi’s Vintage Clothing (通称:復刻)の1901年モデルのサンプル品の写真です。
バックポケット上部左右両端にリベットが付いています。現在のジーンズでもフロント部に付けられているリベットは露出した状態です。上で紹介した写真をご覧になると、当時はバックポケットのリベットもフロントと同様に直接取り付けられていました。
しかし、バックポケット部のリベットは、馬の鞍や家具(特に椅子やソファー)等に擦って傷を付けることがあるため、ユーザーの間では不評でした。
隠しリベット誕生
1930年代リーバイスのライバルのLeeは、バックポケットの取り付け強化にリベットではなくバータックを採用し、さかんに鞍や家具を傷つけない特徴を宣伝していました。
1937年に、リーバイスは、ユーザーのニーズとライバルへの対抗のため、バックポケットのリベットの取り付けを変更し、バックポケットの生地をリベットの上にかぶせる様に縫う手法に変更しました。
リベットは従来通りポケットの左右両端に取り付けられているものの、表側から見た場合には、ポケットの生地がかぶさっているため見えなくなりました。
下の写真は推定年代1940年代後半頃の501のバックポケット部です。表側から見た場合にはリベットはポケットの生地に隠れていて見えません。
しかし、内側から見るとバックポケットの上部両端にリベットが取り付けられているのが分かります。
このリベットの取り付け仕様を”隠しリベット”と呼ばれています。英語では”Hidden Rivet”です。
隠しリベットは1937年から1966年頃までのリーバイスのジーンズに採用された特徴的ディテールです。1966年以降は、隠しリベットに代わってバータックが採用されました。
1966年は、ヴィンテージ・リーバイスで有名な品番、501XXの最後の年です。そのため、隠しリベットは、501XXの一つの大きな特徴でもあります。
リーバイス501は年代によって、細かいディテールが異なります。隠しリベットは、ヴィンテージリーバイスの代表である501XXの特徴的ディテールです。
ヴィンテージの501の内側を見て、バックポケット上部両端付近にリベットがあれば、501XXであると判定する事ができます。つまり、隠しリベットはモデル判定の材料となるディテールの一つとなっています。。
ヴィンテージ愛好家の間では非常に良く知られた言葉でも、”隠しリベット”や”赤耳”は、一般の人が聞くと『えっ、なんなんだろう?』と思う様な言葉だと思います。
今後もジーンズの知られている様であまり知られていない事や雑学的な話をブログで紹介していく予定です。
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