タグについての疑問点と推測
本記事で紹介したヴィンテージレッドウイングは、オロラセットと思われる革を使用しています。
オロラセットは、原則、アイリッシュセッターのファミリーのみに使用される革です。
アイリッシュセッターであれば、犬タグが付けれるはずです。 なぜ、犬タグでなく、紺タグが付いているのか?と言うのが、現状の疑問点です。
これについての現時点での推測を以下に書きます。
シナリオ1:
ある企業(恐らく建設関連の会社)が、まとめてレッドウイングに特注して作られた製品だった。
仕様は855を元に、高さは10インチで若干高く、アイレットを1個追加した製品である。
ハンティングでなくワーク用途のため、タグはアイリッシュセッターでなく、レッドウイングのタグを使用した。
シナリオ2:
上で引用した1960年の広告と説明にある様に、元来ハンティング用途として作られたアイリッシュセッターであったが、ワーク用途で使用する労働者たちから人気であったため、ワーク用途のアイリッシュセッターとして作られた855または855の派生品だった。
ワーク用途のブーツのため、犬タグではなく、レッドウイングのタグにした。
シナリオ2に少し関連する材料として、アイリッシュセッターのホームページにある1960年の説明を紹介します。
1960年: アイリッシュセッター・ワークプロダクツの登場によって、アイリッシュセッター・ブランドマークはアップデートされました。この新しい目的に特化したワークブーツのラインは、アイリッシュセッターのハンティングDNAとレッドウイングのパーパスビルトのDNAが合体したものです。
1960年にアイリッシュセッターのワークのラインが新たに追加されたと説明されています。 また、新しいアイリッシュセッター・ワークの登場で、ブランドマークは更新されたとあります。
このブランドマークはタグも含んでいる可能性があります。 アイリッシュセッター・ワークには、犬タグではなく、レッドウイングタグを取り付けていた可能性も考えられます。この可能性は、シナリオ2と合致します。
ここでさらに興味深いのが、上でも紹介した本品を含む@masa4723 さんご所有の3足のブーツの中で、仕様は877に準じているにもかかわらず、タグは犬タグではなく、羽タグが付けられていることです。
下の写真は、3足のレッドウイングブーツのタグです。左から順に、羽タグ、犬タグ、紺タグになります。
左の877と同仕様のブーツに羽タグが付いていることから、1960年から60年代半ば頃までは、アイリッシュセッターでもワーク用途のものには、犬タグではなく羽タグが取り付けられていた可能性が考えられます。
下の左の羽タグ877仕様も、シナリオ2の可能性を示す材料となっています。
製造年代についての推定
本品は、トラクショントレッドソールであること。DU-FLEXロゴがパターンと一緒に入れられているタイプであることから、年代としては1959年頃以降と推定します。
また、紺タグは基本的には1950年代頃の古い年代のタイプであるため、新しいとしても1960年代の初め頃と思われます。
上記などから、推定年代としては、1959-1960年頃の可能性が高いと考えています。
古い年代のヴィンテージ レッドウイングの場合、内側のサイズ表記のそばに製造年やモデル名が記載されている場合が多いです。
以下は、送っていただいた内張りの表記付近の拡大写真です。
サイズ表記を示す”8 1/2 EE”は明確に読み取れます。通常、サイズ表記の下の行に製造年月が記載される場合が多いです。
写真では、EEの下に0と思われる数字が見えます。また、少し離れた右に”02”または”0Z”と思われる刻印があります。
レッドウイングの製造年月表記で、一桁の数字が年を意味し、二桁の数字が月を意味する事例があります。刻まれている数字が、0と02であった場合、1960年2月製を意味する可能性が考えられます。
また、一つ前に書いたように、ソールの特徴と年代の関係等を考慮した推定年代、1959-1960年とも合致します。
総合的に考えて、現時点で材料を元にした推定年代として、1960年製と判定します。
年代判定は、材料が多くなるほど、確度が高くなります。同型のモデルや年代やディテール関連の情報をお持ちの方、いらっしゃいましたら、ご連絡頂けると大変ありがたいです。
追記
本記事で考察を行った紺タグのモデル・スタイル名が判明しました!! 推定年代の元となっていた02は、スタイル番号202を部分的に示していると思われるため、製造年を1960年推定した材料ではなくなりました。年代としては、1959年以降、1960年代前半までと現時点で推定しています。
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