コレクターの間で、”幻のレッドウイング アイリッシュセッター”と呼ばれているモデル番号888を紹介します。
アイリッシュセッター 888誕生の背景
下の写真は、2014年秋冬モデルとして、レッドウイングが発表した緑色のモックトゥのブーツ、8180の発表記事の中からのものです。8180(写真右)は888にアイディアを得て作られたと紹介されています。
伝説的な米大リーグの名選手テッドウイリアムズは、アウトドアが趣味で、大リーグ引退後は釣りに熱中していました。
当時、シアーズはテッドウイリアムズの名声とアウトドアの趣味を持つスポーツ選手の経験を活用して、ハンティング、フィッシング、野球などの家庭用スポーツ用具のラインの開発とマーケティングを行う契約をウイリアムズと結んでいました。
1963年、レッドウイングは、テッド・ウイリアムズとシアーズと共同で、非常に優れたスポーツブーツ、”スーパーセッター(SuperSetter)”の開発に着手しました。
1950年代の初めにハンティング・ブーツのラインとして市場に投入されたアイリッシュセッターは大成功を収めました。
元来ハンティング用として位置づけられていたアイリッシュセッターは、高層ビルの建設現場で働く労働者からも人気を得たため、1960年にレッドウイングは、労働者向けのアイリッシュセッター・ワーク・ラインを追加しました。
1960年代の初め頃に、レッドウイングはアイリッシュセッターの用途をハンティングからさらに対象を広げたスポーツブーツのラインを計画して、シアーズとテッドウイリアムズと共同したのではないかと推測しています。
そして、1964年に誕生したのがアイリッシュセッター888です。888は、緑色のカンガルー革、Dリング、ビムラムソールを採用しています。上の写真の888の箱にもsport bootsの右上にKANGAROO LEATHERと表示されています。
カンガルーの革は、皮革素材の中で最も強度が高いひとつで、さらには軽量である特徴を備えています。そのため、カンガルー革はオートバイのレースで使用されるつなぎやサッカーシューズなどに使われています。
888は高級感溢れる非常に凝った造りと素材を使用しています。通常のアイリッシュセッターとは異なる特徴を備えています。
以下は、ロングホーンインポートのストックの888から各部の特徴を紹介します。
特徴
革型と構造は、アイリッシュセッター877に近いです。877と異なる目立った外観上の特徴は、Dリングの採用、ソールはビブラムソール等です。
写真では黒っぽく見えますが、黒みがかったダークグリーンです。落ち着いた色で高級感があります。
足の挿入部は少し明るめのグリーンのライニングが施されています。シャフトの内側も非常に質感の高いスムースレザーのライニングが入れられています。
タグはアイリッシュセッター、通称犬タグです。プリント犬タグの最初期のタイプです。タグを取り付けている舌革の裏側にもさらにスムースレザーが張られています。
ソールはビブラムソールです。本品は着用感は感じられない、ほぼ未使用のコンディションです。
888は、非常に高い質感のある革を使用し、造りも非常に凝っています。当時のレッドウイングの意気込みが感じられます。
現在、レッドウイング アイリッシュセッターには、ハンティングとワークのラインがあります。どちらも使用用途に特化した最新のテクノロジー・特徴を備えた製品群です。
当時レッドウイングが888でアイリッシュセッターの拡大を目論んだスポーツブーツは、思惑通りには立ち上がりませんでした。
しかし、888を見ると当時のレッドウイングの意気込みを随所に感じます。通常のアイリッシュセッターとは、一味も二味も異なります。
「幻のレッドウイング・アイリッシュセッター」888は、激動の時代、60年代に誕生したレッドウイングの野心作です。重厚感あふれる佇まいを持ち、いたるところにこだわりが感じられます。
本記事で紹介した888は、表記サイズ11E。ほぼ未使用の極上コンディションです。
本品は、希少性が非常に高いヴィンテージ品であるため価格は現状、未公開としております。ご興味ある方は、お気軽にお問い合わせください。よろしくお願い致します。
はじめまして!
自分も65年製RW888の愛用者です。
最近のRWではすでに失われてしまったノルウェイジャン製法であることも888の大きな魅力と感じてます。
履いたり手入れした感覚ではバンプはリザードではなく、型押しのエンボスレザーの印象です。
自分の知る限り、この50年間のRWブーツの中では技術の粋を凝縮したおそらく最高のブーツと思ってます。
はじめまして!
とても貴重で参考になるコメントありがとうございました。
888は、ウェルトが印象的だなと思っていましたが、それ以上の注意を払っていませんでした。見てみたところ、おっしゃる通りノルウィージャン製法ですね!!
これは888の大きな特徴の一つだと思います。
手元にある50年代と60年代のレッドウイングのアイリッシュセッターや羽タグのものを見てみましたが、それらはグッドイヤーウェルトでした。
過去のレッドウイングのモデルで、他にノルウィージャン製法を使用したモデルをご存知でしょうか?
888は、他のレッドウイングのアイリッシュセッターとは異なる印象が強いです。コストを度外視して(コストは考慮せず)、造られた印象を持っています。まさにおっしゃる通り、私も888は別格だと思います。
今までレッドウイングについて調べてきて得た情報とその印象を申し上げると、レッドウイングは1950年以前は、軍用の靴がメインで、それ以外はミネソタ、特にレッドウイング周辺の労働者向けのブーツが主要事業(比較的廉価で、耐久性のあるミリタリー・ワークブーツ)で、ハンティングやアウトドア系ではそれほど知られていなかったと思っています。
アイリッシュセッターが大ヒットとなり、全米に顧客層も広がって、有名になっていったと認識しています。1950年代、アイリッシュセッターが大成功を収めた後、60年代に入って、究極のスポーツブーツとして、888を開発し世に出したのではないかと考えています。
バンプの素材についてですが、私も少し半信半疑なところがあります。しかし、手元にある数足を見比べたり、細かく見ても、リザードなのではという気持ちが半分以上あります。
素材を含めて、レッドウイングに問い合わせることも考えています。(コンタクトはする予定です)
可能であれば、もう少し具体的な情報交換などをさせて頂きたいと考えております。
もしもできましたら、本サイトのお問い合わせフォームかお問い合わせのページに記載されているメールアドレスまでメールにて、ご連絡いただけませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。
いえいえ永年RWを愛している単なる愛好者の一人というだけですから難しいことはわかりません。大げさにしないようにお願いします。
888はバックステイもバンプと同じ革を使用していますが、そのプル部分で革の裏面をご覧になればリザードではないと御確認できると思います。
お返事ありがとうございます!
私もプル部分を見たのですが、通常の革の上にリザードの革が貼られているのではと思いました。プル部分は、一枚の革ではなく、表面にもう一枚貼られているように見えました。しかし、リザードの革がそこまで薄いのかどうかは確証はありません。と言うことで、確証があるわけではありません。
p.s. 別途、メールを、明日、送付する予定です。
RWのブーツでノルウェイジャン製法のものは他に知りません。こいつだけが突出して特異な感じです。
この製法にすることで防水性などを追及していると思います。モックの縫い目部分にもう一枚革を被せている点もそうです。
シャフトがカンガルー革(豪州)で軽くて柔らかく、ソールはビブラムですがスイス製です。当時で世界最高の素材と製法の結晶だと思います。
後に同じ888の品番で茶色の8インチブーツが発売されています。たしかこいつは全体が型押し革だったと記憶しています。
お返事ありがとうございます。”888だけ特異な感じ”と言うのは、全く同感です。外観や雰囲気からも、他のモデルとは、強く特異な印象を感じさせられます。おっしゃる様に細かいところも一手間かかっている様なところも随所に見られますよね。ライニングの革も本当に上質です。当時の最高の素材と製法の結晶というのは、的を得た表現だと思います。
70年代の888は、おっしゃる通り全体が型押し(エンボス、いかにもニボ加工)の革ですよね。ロット(スタイル)番号は同じですが、全く別物の印象が強いです。