ロングホーンインポート

厳選したヴィンテージとUSライン定番ジーンズの販売、ヴィンテージに関する情報等を発信しています

推定80年代の顧客向けレッドウイングカタログ

レッドウイングのカタログは、販売店向けと顧客向けに大きく分かれます。今回紹介するものは、推定1980年代前半のレッドウイングの顧客向けカタログです。

カタログは、掲載されている製品・モデルの情報を知ることができるとても貴重な情報源です。また、商品構成、スローガン、メッセージングなどから、その当時のレッドウイングの製品戦略、マーケティング、取り組みなどについて考察したり、推測する資料にもなります。

このカタログは、見開きの大きな紙の両面にモデル他・カタログ情報が印刷され、折りたたむ・綴じ込む形式の構成です。主な箇所、表記・表示について紹介します。

表紙

タイトルは”The Fitting Place”です。レッドウイングの販売店の写真が大きく掲載されています。お店の看板”RED WING SHOE STORE”のサイン、右にレッドウイング社のロゴ、左に”6 to 16, AA-EEEE”の表示があります。

サイズ6から16まで、WidthはAAからEEEEまでの意味です。サイズの品揃えが物凄くあることを示しています。豊富なサイズ展開はレッドウイング社創業時からの製品戦略の要であり、数十年以上経過しても、その方針を維持し強調しているところが印象的です。

The Fitting Placeとタイトルで強調されていることは、メーカー側でのサイズ揃えが豊富なだけでなく、実際に店頭において在庫として豊富なサイズを用意していることを示しています。

80s Catalog Front Page
推定80年代のレッドウイング顧客向けカタログの表紙

販売店はガラス張りで店内全体の様子が見えるようになっています。入り口の両脇上部に、”WORK”, “SPORT”, “LEISURE”のサインがあります。

写真の下に”WALL TO WALL WORKSHOE STORE”のメッセージがあります。店内の写真でも、壁一面に靴箱が陳列されています。文字通り、壁から壁までワークシューズのお店であることを物語っています。

裏表紙

裏を見ると、MAIL TO: のセクションがあることから、このカタログは顧客宛に郵送することを考慮した構成になっていることが分かります。

80s Red Wing Catalog on Back
カタログの裏側。宛先を入力して郵送できる構成になっていることが分かります。

“RED WING SHOE STORE”とロゴ、その下に”The Fitting Place” “for hardworking feet”の表示。中央部は印刷が空欄となっており、そこにイリノイ州Ciceroのレッドウイング販売店のスタンプが押されています。

下側には、”WALL-TO-WALL SHOES FOR WORK”, “to fit your preference and your job.”, “SIZE 5-16, AAA – EEEE to fit your feet”の表示があります。

表側のメッセージと基本的に同じです。表の写真のサイズとは若干異なりますが、写真に表示されていたサイズ雨展開よりもさらに幅広いサイズを用意していることが強調されています。

右下に小さくM515-6/85と記載されています。後の部分は年月を示すのではないかと推測しています。そうであれば、85年6月になります。本記事の後で、本カタログの推定年代について、別の観点からも考察を行います。

表紙裏一面

綴込みを一つ開くと以下のページになります。位置付け的には裏表紙に該当すると思います。

“We Sell Nothing But Shoes for Work With A Proper Fit For You.”, “We Want You To Be Our Customer!”のメッセージにレッドウイング店内のイラスト、”WALL TO WALL SHOES FOR WORK”, “SELECTION to fit your job!”の言葉が続きます。

表表紙と首尾一貫した統一感のあるメッセージです。

80年代の顧客向けレッドウイングカタログの裏表紙上側。
80年代の顧客向けレッドウイングカタログの裏表紙上側。

下側の枠内右側には、オックスフォード、ペコスプルオン、ブーツのイラストと作業ツールのイラストがあります。

枠内左側のメッセージの概要:

良いワークシューズは、あなたの仕事の必要性、そして同様にあなたのお好みを満たすべきものです。例えばあなたの仕事はセフティトゥが求められる、しかし、あなたはペコスのプルオンが好みだったとします。レッドウイングは、その両方を満足させることができます!

コンクリートの上で仕事をされる? 初めから最後までの間の各ステップを和らげる特別なウェッジ形状のクッションクレープソールの中からお選び下さい!オイルに耐性のあるソールを選んだり、スリップ防止のソールもあります。オックスフォード、チャッカ、6から8インチのブーツ、ペコス プルオン、または、ウエスタン・ワークブーツからお選び下さい。

下は見開きの下側のページです。

上の表は、レッドウイングの各種ソールの種類と特徴・特性のマトリックス表示です。下欄にモデル・スタイル名が表示されているので、どのモデルがどのソールを採用しているのか?そのソールの特徴・特性は何かなどが一覧で分かるようになっています。

80s Red Wing Catalog Sole Chart+Safety Boot description
80年代カタログ見開き部下:各種ソールの機能特徴・特性マトリクスとセーフティブーツの特徴説明。

下半分は、LARGE SELECTION to fit your safety needsの表示。多くの選択肢のなかから、あなたのセーフティニーズに合うものを選んでくださいのメッセージ。

その下にレッドウイング・セーフティシューズは様々なスタイル、機能特徴、素材があること、参考例として最も売れているブーツの機能特徴の説明が記されています。

モデル一覧

綴込みを全て開くと、一面にレッドウイング・シューズ・ブーツの全モデルがイラストで一覧表示されています。

トップ部にレッドウイングのロゴ、続いて”FIT FOR WORK, SPORT, SAFETY AND LEISURE”、”IN STOCK – NO WAITING”の表示があります。全て在庫があると言うメッセージです!(凄い!)

80s Red Wing all modes at a glance
80年代のレッドウイング、全モデル一覧表示。

モデル一覧は、左側がセーフティシューズのライン、その下にアイリッシュセッターのライン、右側にレディースのライン。中央は全般・多様用途向けの各種シューズのラインナップの構成です。

レディース・コンフォートシューズ・ライン

全モデル一覧の右側のレディースのラインの拡大写真です。

80s Red Wing Ladies Model Line
レディースモデル一覧。

アイリッシュセッター群

下は全モデル一覧ページの左下のアイリッシュセッターのラインの拡大写真です。おなじみのアイリッシュセッターのロゴ。全部で8モデル。うち1モデルがレディース。1モデル(899)がメンズレディース共通です。

80s Red Wing Irish Setter Models
80年代レッドウイング アイリッシュセッター・モデル一覧

ソールは以下の3種類です。

  • クッシュンクレープ: 866, 875, 877
  • ビブラム・ラギッド: 855, 890, 899
  • スーパーソール: 807, 859

注目ポイントと考察

見開きで大きな一枚の構成のカタログですが、記載されている内容で興味深いポイントが多々あります。

推定年代について

裏表紙の右下隅にM515-6/85の記載から、85年であると推測しています。カタログ内にある情報で年代を推定する材料として考慮したものをいくつかリストアップします。

  1. 表示されているレッドウイングロゴには、Made in USAが入っていない。
  2. ロゴ以外の箇所でも米国製を示したり、アピールするような表示は見当たらない。
  3. 表と裏の表紙に、”SHOES FOR WORK”の表示があること。

80年代のレッドウイングの製品に取り付けられているタグには、ロゴにMade in USAの表記が加わっているのが特徴です。

70年代の後半頃から、レッドウイングは米国製であることを示すMade in USA表記をロゴに追加しました。これは、米国製であることを強調・アピールするようになったと解釈できます。

80年代以降は、米国製であることを強調する傾向はさらに強まったと認識しています。しかし、このカタログには、米国製であることは謳われていません。

そのため、このカタログの年代は70年代の可能性もあると思います。

その一方で、表紙に”SHOES FOR WORK”と入っていることも、年代推定の一つの材料として着目しています。

80年代に入ってから、レッドウイングは市場の変化に対応するためマーケティング戦略を変更し、ブランドラインに変更を加えました。

この時の変更の一つが、「モットーと強調点をWORK SHOESからSHOES FOR WORKに変更した。」と手持ちの資料にあります。

このカタログでのメッセージが、後者のSHOES FOR WORKになっていることは、80年代であることを間接的に示しています。ただし、これはサポート材料の一つであって、強い判定材料ではないです。

尚、セーフティトゥが入る1986年製ペコス2268を一つ前の投稿で紹介しておりますが、本カタログには2268はありません。このことは、このカタログが1985年以前であることを示す一つの材料でもあります。

ペコス

表紙裏などの説明には、”ペコスプルオン”の言葉が登場していますが、モデル一覧の方には、アイリッシュセッターのようなペコスファミリーなりラインとして分けて取り扱われてはいません。

さらには、ペコスと言う言葉自体もレディースの1モデルのみ表記されているだけです。

ペコスの表記があるのは、このレディースモデル9755のみです。
ペコスの表記があるのは、このレディースモデル9755のみです。

レディースの1モデルだけしか、PECOSの名前が表示されていないというのは興味深いところです。

その理由に関連するかもしれないシナリオについて次に説明します。

考察

注目点:80年代はモデルやラインのニックネームはあまり使われていなかった

現行のレッドウイングでは、”ベックマン”、”ペコス”、”アイロンレンジャー(アイアンレンジ)”、”ポストマン”などのニックネーム・モデル名がしばしば使われます。スタイル・モデル番号よりも普及している場合もあるかと思います。

対照的に、80年代はモデルやラインをニックネームでは積極的に呼ばなかった可能性があります。上で挙げたように”ペコス”の名称が使われていないことがその一例です。

もう一つ参考例として、101を紹介します。101は、ポストマンのニックネームで親しまれている長年の定番モデルです。

Red Wing 101
レッドウイング ”101 – Black”のみの簡素な表示。ポストマンの愛称は表示されていません。
注目: ”101 – Black”と”9401 – Brown”の非常に簡素な表示のみです。ポストマンの表示はありません。
考察:

アイリッシュセッターは、明確な製品ラインと位置付けられており、専用のタグが取り付けられているので、本カタログ内での取り扱い・構成として分けていますが、それ以外、例えばペコスは基本的に分けず、大きな用途としてセーフティシューズとそれ以外に分けていたと解釈できます。現在は、モデルを愛称・ニックネームで呼ぶことが普及していますが、80年代当時の米国ではあまり一般的ではなかった可能性が考えられます。上の101・ポストマンがその一例です。ペコスは、プルオンブーツのスタイルの名称としては認知されていたものの、あえてペコスのxxxxと呼ぶのではなく単に個別のモデル番号、例えば1155, 1177, 2255, 2268の様に認知されていた可能性があります。この様な名称・取り扱い方は、現在の日本でのアイリッシュセッターと各モデルの関係に近い様に思います。アイリッシュセッターの名称自体は認知されていますが、”アイリッシュセッター 866/875/877″と呼ぶのではなく、単に番号で呼ばれる方が多いのとにていると思います。

過去の製品カタログは、その時の年代の特徴やレッドウイングの取り組みなどを物語っていたりして、とても興味深いです。ここで取り上げきれなかった内容については、別途、記事を投稿する予定です。

コメントを残す

*

Return Top