デッドストックの501が入荷しました。本品はフラッシャーとギャランティーチケットが同年代の505に使われているもので、防縮加工が施されていると記載されています。そのため、防縮加工最初期の501ではないかと当初推測しておりました。しかし、内側に付けられている取り扱い説明タグには10%程度縮むと記載されており、表記内容が一致していません。以下、本品のディテールの紹介と分析を行います。
この写真を見て、目を引くのがフラッシャーとギャランティーチケットです。通常の501で使用されているものではありません。
フラッシャーもチケットも年代としては80年代前半のもので合致しているのですが、両者とも防縮加工デニムに使われる表記(”Shrinkage controlled to approximately 3%”)があります。
70年代から86-7年頃までの製品にはロット番号501の上に小さい文字で”CARE INSTRUCTION INSIDE GARMENT” (『本衣料品の取り扱い説明が内側にあります』の意)がスタンプされているのが表記上の特徴です。パッチは通常の80年代前半の501のもので、特に変わったところはありません。
しかし、内側の取り扱い説明タグは私の今まで見てきた通常の501とは、タグ大きさと形状、ロット番号等の数字の記載方法等が異なります。。
取り扱い説明には”Shrinks approximately 10%”と記載されています。80年代からの取り扱い説明は、縮みの目安がそれまでの8%から10%に変更になった事が大きな変更点です。本501も通常通り縮みの目安は10%です。フラッシャーには縮みは3%となっており、一致しません。
表記されている取り扱い説明自体はこの年代の通常の501のものですが、タグの大きさとロット番号、サイズ情報他の数字の表記形式が通常のものとは異なります。通常は下のタグになります。
下はバックポケットの左角上の拡大写真です。
ポケットの取り付け強化のためにオレンジ色のバータックが施されています。それ以前のモデルでは、内側から暗色系の糸を使用したバータックが施されているのが特徴です。後者は通称”黒カン”と呼ばれているディテールです。
オレンジ色のバータックへの変更は82-83年頃から脇割りの製品で採用されています。
本品は脇割りです。80年代の始め頃から脇割りの501が赤耳と平行して製造され始めました。79-80年製の66後期でも脇割りの存在が確認されています。最初期の脇割りの製品は黒カン、インシームシングルステッチ、裾裏チェーンステッチのそれ以前のモデルと同じディテールを採用しています。脇割り誕生後、しばらくして、カンヌキは表側からオレンジ、インシームはダブル、裾裏はシングルに移行となりました。
本品の裾裏はチェーンステッチです。インシームはオレンジと黒系のダブルステッチです。
これらの仕様から本品は1980年以降1983年以前の製品と推測しています。
ここで冒頭に述べたフラッシャーとギャランティーチケットには防縮加工デニムの記載となっている事と内タグの記載内容の不一致について考えてみたいと思います。
取り扱い説明は内側に縫い付けられているものです。一方、フラッシャーとギャランティーチケットは紙製で、外側に付いています。オリジナルではプラスチック製のストリングで留められています。本品の場合はストリングではなくホッチキスでとめられています。
フラッシャーとギャランティーチケットは紙製のため、外れやすいです。一旦、外れてしまったものをホッチキスでとめる事はこの年代以前のデッドストックではめずらしくなく、比較的頻繁に見られます。
ホッチキスでとめられている事自体は別に不思議でもありませんが、内側に縫い付けられている取り扱い説明と記載内容が異なる事から、恐らく本品に元々付いていたものではなく、同年代の505のものを後から付けたと推測しています。
また、本品の生地の色味は下糸の白が目立つ生デニム特有の色味をしています。
下の写真は同年代のデッドストックの517と並べて撮ったものです。
左が517、右が501です。ちょっと分かりづらいかもしれませんが、右の方が白みがかかった色味をしています。左の防縮デニムは生地が詰まって、色味が濃く見えるのが色味の特徴です。生デニムは生地が詰まっておらず下糸の白色が生地の隙間から目立つのが特徴です。右の生地は特徴的な生デニムの色味、風合いをしています。
内タグの記載内容と生地の外観からこの501は生デニムであると判定しております。
コメントを残す