レッドウィング/ベルリン・ハンブルグ・ミュンヘンのFacebookに、1949年のレッドウィングの広告の写真が掲載されていました。色々な意味で示唆するものがあり、とても興味深い広告です。
Archives Monday:
Today´s item out of our archives is a beaten up, but beautiful 1949 store advertisement supported by a…
Posted by Red Wing Berlin/Hamburg/Munich on Monday, January 4, 2016
本広告についての着目点と考察をしてみます。
BOOTSを強調
この広告では、BOOTSを強調していることが特筆すべき点です。
さらには、中央のロゴが”RED WING SHOES”ではなく、”RED WING BOOTS”となっています。
一番下のラインも、”Boot Markers for 44 Years”と書かれ、ShoesではなくBoot Makersとなっています。
紺タグでも、RED WING BOOTSとなるBOOTS表記のものがあります。
年代判定の材料
“Boot Markers for 44 Years”の表記から、本広告の年代はレッドウイング創業の1905年から44年後の1949年であることがわかります。
コピー・文言
『Like Mythical “Seven League” Boots』(神話のセブンリーグブーツの様な)のタイトルコピー。
All Weather(全天候で使用可能な)が続き、”RED WING BOOTS”のロゴが中央に表示されています。
その下に4つの特徴が白枠に赤字で表示されています。
- Lightweight (軽量)
- Flexible (柔軟)
- Sturdy (頑丈)
- Comfortable (快適)
”44年間の実績のあるブーツメーカーです。”的な意味で締めくくっています。
Seven League Bootsとは?
セブンリーグブーツ(Seven-league boots)とは、ヨーロッパの言い伝えに登場するものです。
このブーツを履いた人は、7リーグ(七つの海と七つの大陸の意味に該当すると思います)をひとっ飛びで渡ることができると言われています。ブーツはしばしば、魔法使いの主人公が、重要な使命を果たすのに使われます。
この伝説のブーツは、ヨーロッパ各国の逸話で登場します。
フランスのCharles Perrault作のおやゆびこぞう(Hop-o’-My-Thumb, 1697、グリム童話ではなく、ペロー童話)もその一つです。

イラスト
イラストで描かれている人物は、ハンターです。広告の主要な対象が、ハンターであることが分かります。
着目点と考察:
ハンターが着用しているブーツの型は、877系のものです。色は、黒・暗色系のレザーに、ソールはオフホワイトです。
これらの仕様から、このブーツは954と思われます。954は、アッパーが黒のオイルドソフトタンのレザー、1950年に登場する最初のアイリッシュセッター854と(後年に登場する877も)同じ型で、ソールは白のKing Bソールを使用しています。
まとめ
1940年代の後半は、第二次世界大戦終結後、社会が大きく変革し始めている時期です。
ミリタリーブーツの製造供給が主な事業であったレッドウィングにとって、戦争の終結によって社会の急速な変化・変革と共に会社の事業形態も大きく変わろうとしている時の広告になります。
戦後、レッドウィングがハンティングブーツを戦略的な製品と設定し、取り組みを始めた初期の段階の広告であると言えると思います。
ブーツを強調する記載から、ワークシューズだけでなく、スポーツ(ハンティング)ブーツへ会社として本格進出する意図・意気込みの表れが感じられます。
(戦前のハンティングやアウトドアの雑誌を見ても、レッドウィングの記載を見たことはありません。ハンティングブーツもラインナップにはありましたが、ハンティングブーツ市場での存在は希薄だったと認識しています。)
この広告の翌年、オロラセットレザーを使用した最初のアイリッシュセッター、854が登場します。アイリッシュセッターは大成功を収め、1950年代、レッドウィングは大きく成長し、米国全土に事業を広げました。
アイリッシュセッターの成功は、今日のレッドウイングの礎を築いたと言えます。
アイリッシュセッター誕生前夜、レッドウィング変革期前のレッドウイングの歴史的にも貴重な資料だと思います。
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